松山から発信。カカオの香りを楽しむチョコレート

「カカオ豆を砕いたときに本当に癒される香りがします。カカオ豆から手作りするビーントゥバーでしか体験することができません。」
(MARUCO MATSUYAMA CRAFT CHOCOLATE 内田貴雄さん)

 

ここ数年来のムーブメントとなっている Bean to Bar (ビーントゥバー)。あちこちで原料を仕入れて工場で大量生産、クオリティを上回る手頃感で大量に消費されてきたのが今までのチョコレートなら、こちらはカカオ豆の選別・仕入れから加工までのすべての工程を一つのお店で行う少量生産。文字通り、ビーン(カカオ豆)からバー(板チョコ)までを手がけ、豆以外の材料にもこだわることで、カカオの風味がしっかり生きたクラフトチョコレートを打ち出しています。

 

そんな新しいチョコレートの作り方とともに、新しい味わい方を提案するビーントゥバーのお店。松山に昨年オープンしたチョコレート店、こだわりのビーントゥバーでもさらにこだわっている、MARUCO MATSUYAMA CRAFT CHOCOLATEの内田さんにお話をお聞きしました。 

マルコが生まれた理由(わけ)

MARUCO CHOCOLATEでは、来店したお客さんがオーダー前にすることがあります。それはチョコのテイスティング。まずは商品を味わって、ビーントゥバー以外のチョコレートとの違いを実感して欲しいという内田さんの思いから生まれた試み。もちろん、テイスティングなしのお買い上げも可能ですが、店頭に並ぶチョコはいつも同じではありません。新商品が登場したり、たとえ同じ種類でもカカオ含有量が少し違っていたり、材料の産地が変わったりと、気になるマイナーチェンジがくり出され、しばしば何かしらNewなのです!

「変化することが大好きなので色々挑戦して、失敗も多いですが結局うまくいってます」と内田さん。これはチョコレート作りだけでなく、人生においても同じだそう。なんといっても、MARUCO CHOCOLATEの誕生こそが、その変化を取り入れる才能の賜物。昨年3月、当時住んでいた福岡でビーントゥバーのお店を知り、カカオ豆から作るチョコレートの香りに感動した内田さんは、その“瞬間”に出店を決意。7月には故郷の愛媛に戻り、11月にお店をオープンさせたのでした。

マルコのチョコたち

開店当初のメニューは、ビター、ミルク、ホワイトチョコが2種類ずつ。

【ビター】シングルオリジン / ベトナム75%ビターチョコレート
ビーントゥバーの中でも、さらに一歩踏み込んで、カカオ豆の産地ごとの味を楽しむ「シングルオリジン」のチョコレート。

ビーントゥバーといえば、カカオへのこだわりから、カカオ含有率の高いビターという印象が強く、実際にミルクやホワイトを出しているブランドは珍しいのが現状。そんな中、より多くの人にカカオ豆から作るチョコの美味しさを知ってほしいということから作られたミルクとホワイト。ビターが苦手な人も美味しくカカオを味わえる、嬉しいラインナップです。

【ミルク】松山ミルクチョコレート
松山発のチョコレートとして全国に知ってもらいたくて、地名入り。Uターンして地元でお店をオープンさせた内田さん、その思いが込められています。

もう一つのミルクチョコ、「シチリアミルクチョコレート」は、チョコレートの材料であるカカオを焙煎して砕いたカカオニブ入りで、こちらにも、土地の名前が。実は内田さん、愛媛生まれイタリア育ち...というわけではなく、シチリアは、古代チョコレート発祥の地。そこには粗く削ったカカオニブの食感を残したチョコレートがたくさんあり、それに近づけるためにニブを入れ、よりカカオの香りを楽しんでもらえるようなチョコレートを作ったのだそう。

【ホワイト】アザラシ
「ホワイトチョコにカカオニブを入れたら、見た目がたまたまアザラシっぽくなったのでそのままアザラシと命名」by 内田さん。あっさりと名付けられましたが、製品へのこだわりはとってもディープ。例えば、普通の砂糖の代わりに洗双糖を使っています。こちらは化学処理なしに生成されるためにミネラルとカルシウムが豊富な甘味料で、その使用量も、一般的なホワイトチョコに使われる砂糖と比べて半分以下。さらに、入手困難なコロンビア産カカオ豆を搾ったナチュラル・カカオバターを使用し、植物油や添加物が加えられた市販のホワイトチョコにはない、自然の味わい&体への優しさを追求しています。


マルコの男たち

このお店のキーマンは、店主の内田さん、共同経営者の桐内さん、アルバイトの斎藤くん。このメンバーで製造を担当し、商品を網羅するこだわりの発信源でもあります。例えば内田さんは、ホットチョコマスター。普通はココアのパウダー、ミルクと砂糖で作りますが、マスターが使うのは、固めればそのまま板チョコになるチョコレート原液。しかもその使用量、なんと板チョコの2~2.5倍! 蛇口から溢れ出るチョコレートと、しっかりしたカカオの味が、目にも舌にも感嘆をもたらしてくれます。

 

まかないマスターも、いまのところ内田さん。チョコのお店なので、まかないチョコ。そのバリエーションはマスターの好奇心の赴くまま、自由な広がり&こだわりを見せています。先述のベトナム75%ビターを溶かして、愛媛産・ドイツ人マイスター直伝の城川ベーコンにオン。しかもお気に入りの七味とオリーブを添えて。徳島産無農薬カブをあの濃厚なホットチョコにディップしたり、愛媛県久万高原町産の自然農法の小豆を使ったあんバターフランス(パンの下にチョコを隠して)などなど、遊び心も、とりわけチョコに向けては全力投球で!

さらに内田さんは、筋金入りの“実験くん”でもあります。焙煎時間を変えてみたり、定番商品のマニア向けを作ってみたり、中に入れていたカカオニブを外にもまぶしてみたり...と、すでに人気のアイテムでも、そこからさらにさらに進化させようと、日々試みは続いているのです。

そんなマルコのこころざし

こうして生まれてくるマルコのチョコレート。ビーントゥバー・チョコレートは製造に時間がかかり、技術を持つメンバーも限られているため、お店を開けるのは週に4日のみ。それ以外の日を製造に当てて、昨年11月のオープンから1日も休まずに(!)作り続けているのだそう。しかも製造工程によっては徹夜も辞さず... 想像するだけで目が血走ってしまいそうですが、その様子はあくまでマイペース。それどころか、日々、カカオの奥深さ、フルーツや卵や抹茶といった食材の魅力にしみじみと感動しながら、実に情緒豊かに奮闘している様子。

 

背景にあるのは、お客さんに良いものを届けたいという、シンプルで強い思い。例えばMARUCO CHOCOLATEでは、ドライフルーツも自家製です。主に愛媛県産の生のフルーツを仕入れて手作りしていますが、それは市販のものは添加物が多く、産地の詳細も不明で使いたくないからだそう。とはいえ、メインはチョコレートのはず。そこまでこだわる理由を聞くと、「本人が食べたいからですが、自分が食べたくないものはお客様にもお出ししたくないというのが一番の理由です」

 

ここまでクオリティにこだわり、つまりはコストをかけながらも、包装を簡易にするなど工夫することで、他店の同じようなサイズのビーントゥバーよりも価格は3~4割低め。ビーントゥバーゆえに安くはないものの、「日本一買いやすい」ことを目指しているのだそう。

自分の思いに忠実であることで、お客さんにも寄り添うチョコレート。そんな自分本位=お客様本位を素敵に成り立たせているまっすぐで朗らかな情熱を背景に、今日もアザラシが、シチリアが、飛ぶように売れていきます。

売り切れ、御免。でも大丈夫です、マルコにはきっといつも新しい楽しみがあると思える。だからまた近々、足を運んでみましょう。何度でも、カカオのいい香りに誘われて。

 
MARUCO
MATSUYAMA CRAFT CHOCOLATE
松山市本町6-11-1-105
TEL:089-909-6358
休:月・火・水
https://www.instagram.com/marucochocolate/