PIRATES OF THE SETOUCHI 今も根付く海賊文化と"瀬戸内のジャンヌダルク"

 
 

愛媛人にとって「海賊」は海の番人
秩序・人を守る存在であった

日本遺産にも選ばれた「村上海賊」。最近は村上ショージさんや村上信五さんら芸能人が「村上海賊の末裔」として紹介されるなど、聞いたことのある人も多いのでは。海賊といえば、豪遊・強奪などのイメージが浮かぶ人もいるかもしれませんが、彼らは瀬戸の覇者として、海の秩序の守り人であり、複雑な潮流のなかで生きるための水先案内人でもあり、瀬戸内のスーパーヒーローでした。因島、能島、来島…。3つの拠点で同じ村上姓を名乗った三家の強い同族意識が、芸予の海を掌握しました。関所であり、海の戦に対する備えでもありました。2014年に本屋大賞に選ばれた歴史小説「村上海賊の娘」でも、存在感が描かれています。

「村上海賊の娘」も憧れた、勇敢な少女兵士がいた/鶴姫伝説

 

「瀬戸内のジャンヌダルク」と呼ばれた
切ない少女の悲恋が残る島へ—。

大三島の由緒ある神社、大山祇神社の娘で、1500年代の乱世を力強く生きた少女・鶴姫。周防の国から大内氏が攻め入った際に大三島を守った武将であり、繰り返す激戦の中で兄と恋人を失い、戦には勝利したものの最期は悲しみに打ちひしがれ、入水してしまう悲劇のヒロインでもあります。
わずか18歳。最愛の恋人を亡くし、ひとり沖に出た鶴姫が残した歌は…

わが恋は 三島の浦のうつせ貝 むなしくなりて 名をぞわづらふ
“私の恋は三島の浜にあるからっぽの(命の宿らぬ)貝のよう。虚しくて、名前を思うだけで辛いのです”。

大三島には鶴姫の像が5体あり、大三島の美しい景観にのせてストーリーが浮かびます。人気歴史小説「村上海賊の娘」でも、主人公の景が「大三島の鶴姫でもこうするわい」と発し、憧れの存在として度々登場します。伝説となっていますが、大山祇神社の宝物館には鶴姫が着用したとされる、女性体型の鎧も保管されています。

 
写真上: 絵巻に残された鶴姫。大山祇神社の神主の娘として兄2人とともに武将として育てられ、兄の没後は自ら戦場に向かい、大三島を守ったという。 写真下: 大三島の島内には鶴姫像やその恋人の越智安成の像が点在。石に腰掛け海を見つめる像は穏やかにも寂しげにも見えます。
 
 
村上水軍博物館

愛媛県今治市宮窪町宮窪1285番地
TEL: 0897-74-1065
大人300円 学生150円
高齢者(65歳以上)240円、
高校生以下または18歳未満は無料
月曜休館
http://museum.city.imabari.ehime.jp/suigun/

村上家にまつわる歴史も最新情報も
一挙に集約した“ムラカミペディア”⁈

__今治市村上水軍博物館

戦国時代にポルトガル人宣教師・ルイス・フロイスが残した「日本史」では、村上海賊は「日本最大の海賊」と書き残されています。異国の目から見ても驚異的な存在であった彼らのことが集約されているのが日本初の水軍をテーマにした博物館「村上水軍博物館」です。
古文書や復元品などを通しいろはを知り、実際に使われていたリアルな資料・出土品が見られるだけでなく、最新の発掘成果や研究成果も随時紹介・速報されていてマニアも必見の場所。
村上家伝来の貴重な陣羽織や美術工芸品、復元した甲冑などを見ると、芸予の海を制した日本の「海賊」像が浮き彫りになります。展望室からは美しいしまなみ海道の景観や村上海賊の城があった能島の眺望も楽しめます。

 
写真上:「今治市村上水軍博物館」外観。「村上水軍」という呼称は江戸時代以降に用いられたが、彼らの多様な活動を表現しきれないため、近年は旧称の「村上海賊」を用いることが多い。 写真下:能島村上家当主・村上武吉も着用したとされる陣羽織。武吉は野蛮な海賊行為を辞め、「帆別銭」(通行料)を徴収して海上交通者を守るようになった。
村上水軍博物館

愛媛県今治市宮窪町宮窪1285番地
TEL: 0897-74-1065
大人300円 学生150円
高齢者(65歳以上)240円、
高校生以下または18歳未満は無料
月曜休館
http://museum.city.imabari.ehime.jp/suigun/

海賊たちの目線で激流を体験/潮流クルージング

狭い海峡は複雑な潮の流れとなり、最大10ノット(時速18km)の激流が渦を巻く場所もあるほど。40分の船旅では能島城跡や見近島など村上海賊ゆかりの地を巡ります。

愛媛県今治市宮窪町宮窪1293-2
(村上水軍博物館前)
TEL: 0897-86-3323 午前9時~午後4時
一般1,000円 小学生500円
※小学生未満は無料 月曜定休
http://www.noshima.jp/choryu

海賊たちも食した⁈愛媛を代表するグルメ/宇和島鯛めし

愛媛の人気グルメ、白飯の上に活鯛をのせる「宇和島鯛めし」は、火を使わずに調理できる漁師飯。煙を立てずに食べられるため海賊たちの食事がルーツとも言われています。

取材協力: 宇和島鯛めし「丸水」松山店
愛媛県松山市大街道3-6-4
TEL: 089-931-8122
水曜定休
11:00〜15:00 17:00〜20:00
https://www.gansui.jp/

 
 

ハチイチペイパー的おすすめ周辺スポット

悲恋の女武将・鶴姫の生家
村上海賊が崇敬を集めた神社

全国に一万社あまりの分社を持つ由緒ある神社。神紋の「折敷に三文字」は来島村上家が家紋にもしています。宝物館には鶴姫の鎧や村上家の詩歌も保管されているほか、貴重な国宝や文化財が奉納されています。

大山祇神社
今治市大三島町宮浦3327
TEL: 0897-82-0032
17:00閉門 無料 無休

村上氏が開いた
能島村上家の菩薩寺

能島城主・村上氏が室町時代に開いた曹洞宗の禅寺。お寺の近くには大楠があり能島村上海賊の祖先、村上雅房公とその奥方の墓(五輪塔)があります。心が洗われるような時間を過ごせます。

禅興寺
今治市伯方町木浦甲3645
TEL: 0897-72-0126
無休 無料 観覧自由

村上海賊が駐屯地にした無人島
車は入れない穴場スポット

能島村上海賊が駐屯地としていた島。現在は無人島でキャンプ場となっています。しまなみ海道の橋の下にあり、歩行者・自転車・125cc以下の原付バイクでしか降りることができない穴場。

見近島
今治市宮窪町
TEL: 0897-86-2500
(今治市役所宮窪支所)無料

来島村上家の本拠地と
芸予の海景色を一望

しまなみ海道の玄関口・来島は、来島村上家の本拠地。島自体には船でしか行くことができませんが、来島海峡大橋からはその姿を拝むことができます。海峡は1日に1000隻以上の船が往来し、美しい海景色が楽しめます。

来島海峡大橋
愛媛県今治市から大島間
TEL: 0898-22-0909
[(社)今治地方国立公園協会]