愛南町でチャレンジする、海を思うアート

出典:愛南町役場 商工観光課 

いま、世界各国の企業などで、プラスチックによる海洋汚染問題に対する動きが出始めています。プラスチック製ストローの完全廃止などを決定し、日本の環境省も同取り組みに対し補助金を出すことを決めました。

ストローはプラスチックゴミのほんの一部であり、これだけでは問題解決にならないという声もありますが、一連の動きは、私たちが問題を身近に捉え、いま一度海の美化について考えてみるきっかけにもなりました。

とはいえ、個人として具体的に何ができるかと言われたら、なかなか思いつかないもの。深刻な問題ですが、できれば楽しみながら取り組みたいですよね。


シーボーンアートという方法

愛媛の最南端、海に面した愛南町には、海の美化とアートを合わせて経験できる「シーボーンアート」教室があります。シーボーンアートとは、Sea・Born・Art(海から・生まれた・芸術)という意味で、海岸で得られる貝殻や流木、海藻を使って工芸品を作る活動です。海浜清掃などを通じて作品素材を手に入れ、創作することで、海の環境に対する意識を高めることを目的として、NPO日本渚の美術協会によって2000年より活動をスタート。活動の賛同者による教室が全国に開かれました。

水産の町として知られる愛南町。愛媛大学の協力のもと、2005年に水産業についての理解を深めるため、独自の食育プログラムを立ち上げました。これは「ぎょしょく教育」として、魚触(魚に触る)から魚食(魚を食べる)までの7つの「ぎょしょく」の概念を学ぶもので、シーボーンアートはそのうちの環境教育のパートを実体験できる取り組みとして評価されています。

愛南町ならではの素材を生かして

愛南教室で作られる作品は、フォトフレームに貝殻などを乗せていく手軽なものから、ガラスを一つ一つ積み上げてタワーを作り、中に灯をともすランプまで様々です。自宅用やギフト、展示会への出展など制作目的もそれぞれですが、身近な海を思いながら、じっくり時間をかけて、自分らしい作品作りができることが大きな魅力だそう。


出典:愛南町役場 商工観光課

「作品に使う素材のオススメはヒオウギ貝」と、愛南教室代表の大石ひろみさん。ヒオウギ貝とは、小ぶりのホタテのような少し甘めの貝で、生産量日本一を誇る愛南の特産物です。何よりの特徴は貝の色。特に小さめのものは鮮やかな天然色で、作品に美しい彩りを与えてくれます。ランプに装飾した紫、オレンジ、赤、黄色の貝が内側から光を通して輝く姿に心を奪われます。 

海のほとりでシーボーンアートと出会う

宇和海を望む愛南一帯は、もともとアコヤ貝の養殖が盛んでした。ところが1996年からの2年間で起こった真珠貝の大量死により、真珠養殖業は深刻なダメージを被ります。内海村(2004年に合併前の愛南町)も例外ではなく、これに代わる産業としてヒオウギ貝の養殖が始められたのでした。


出典:愛南町役場 商工観光課 

ヒオウギ貝の養殖が広まって行く中、時を同じくして、大石さんはシーボーンアートと出会います。海の漂着物の中から、人工物であるプラスチックやビニールはゴミとして処理し、貝殻や木片といった「海からの贈り物」を素材として持ち帰り、アートに取り組む。そんな活動内容に共鳴し、インストラクターになることを決めたそうです。 

また、作品の美しさに純粋に心を動かされたことも、シーボーンアートを志したもう一つの大きなきっかけ。その感動を伝えるべく活動を続けて10年余りが経ちました。ご自身も養殖業を営み、なかなか時間が取れないながらも、生徒さんや、時には地元の小学生と一緒に海浜清掃に出ることも。海の現状を知るきっかけ作りができることも遣り甲斐の一つだそうです。


出典:愛南町役場 商工観光課

海と向き合い、その漂着物を使った作品作りを通じて自分と向き合うことで、海への意識を自然に育んでくれるシーボーンアート。愛南教室は、目の前に須ノ川海岸が広がる温泉施設「ゆらり内海」内で開催されています。海水を利用したお風呂や、愛南の特産品を生かした食事も楽しめる施設で、リラックスして海を思い、アートを楽しんでみては。
 

 
ゆらり内海 シーボーンアート教室
TEL:0895-85-1155
愛媛県南宇和郡愛南町須の川286番地
開催日: 毎月第2、第4日曜日 13:00~17:00
http://yurariuchiumi.com/kannai