マニアのガイドで攻略!多くの武将を悩ませた「難攻不落」の軍事城・松山城を攻め落とせ

年間約50万人の観光客が訪れる、松山城。愛媛県の鉄板スポットとして、多くの人が立ち寄るものの、なんとなく見学して、さくっと写真撮影をして帰ってしまう、というもったいない方も少なくありません。

出典:松山観光ボランティアの会

実はこの松山城、こぢんまりとした城でありながら、軍事の城としては驚愕レベルなのです。水陸戦共に得意だった築城主の加藤嘉明が、兵法の粋を随所に練り込んだ「難攻不落」の城は、侵入者の目で見ると一筋縄ではいかない、やっかいな城。

のんびり散策しても素敵な城ですが、攻略する目線で天守閣を目指してみるのもまた楽しいですよ。ここはひとつ、敵軍武将になりきってバーチャルな城攻めを楽しんでみましょう。

いざ、出陣!

トラップに次ぐトラップの連続。心理戦まで織り交ぜた難城
出典:flickr

山頂に本丸を持つ松山城。本丸には現存する天守を含む、国指定の重要文化財の建物21棟があり、かつて空襲や放火などで焼失した櫓・城門・塀なども、全て昔日の姿で木造復元されています。圧倒的な高石垣の迫力に加えて、標高約153mの天守3階からの眺望の素晴らしさ。これらの魅力が特長です。

出典:​松山観光ボランティアの会

美しい城ですが、実はおびただしい仕掛けの数々​が施されている難攻不落の城としても知られます​。侵入者を迷わせ、方向感覚を奪う巧妙な仕掛けと攻撃設備。一歩踏み入れると畳み掛けるようなトラップに翻弄され、背後・横・上から狙われるような造りに驚かされます。ダミーの門にも騙されてしまいそうに…。

むむ、かなり手強いぞ、松山城。

強い味方、無料ガイドボランティア参上

松山城攻略のヒントをくれるのが、松山城を知り尽くした「無料ボランティアガイド」の方々。現物を前に聞く軍事トラップの解説はあっぱれです。優しく丁寧、まさに救世主です!

出典:​松山観光ボランティアの会

城を守る堅実な構造を踏襲しながら、裏の裏のさらに裏をつくような、心理作戦までを練りこんで造られた松山城。「難攻不落」と称された城のマニアックポイントを、「松山城無料ボランティアガイド」鈴木​陸夫さんが教えてくれました。

「​松山城は標高132mの勝山山頂に本丸、中腹に二之丸、山麓に三之丸を配した平山城。まずは、入口の三之丸。幅20間(約39m)の堀や、高さ約6mの土塁で囲まれ、この時点で、敵の侵入をやすやすと許さない造りになっています」

「二之丸は、山腹から侵入しようする敵を阻止するために、南北2ヶ所に全国に数例しか存在しない『登り石垣』が築かれています。ここはルートとしては避けた方が無難。」

出典:​松山城総合事務所

ちなみに、全国でも現存例が少ない登り石垣を、ここまでの至近距離で、広範囲に渡って見られるのは貴重なんだそうです。

出典:flickr

「三之丸を運良く通過しても、二之丸経由で本丸の天守に進むには、実に14の城門を通過しなければなりません。虎口の東ノ門・北ノ門を突破したあとは、二ノ丸の黒門→栂門→槻門→尾谷門→中門→本丸の尾谷二ノ門→戸無門→筒井門→太鼓門→本壇一ノ門→二ノ門→三ノ門→筋金門を通り、やっと本壇最深部に辿りつけます。ただし、まだ中庭ですがね」

…ひえぇぇ!これだけの試練を超えてもまだ中庭なんて。メンタルがへし折られます。

出典:​松山観光ボランティアガイドの会

14の門も、もちろんただの門ではありません。各所に敵兵を潰すための仕掛けが満載です。例えば中ほどの戸無門は、文字通り扉のないラッキーな門ですが、次の筒井門の死角には奇襲用の隠門と、無数の狭間があり、辿り着くと同時に一斉に攻撃を受けることになるのです。

出典:​松山城総合事務所

戸無門で不要にテンションを上げさせ、油断した瞬間に潰す。他にも、進行方向と真逆に進ませる門や、天守を見せて直進させ、袋のネズミにする小道など、攻撃に有利になるだけでなく、心理的にもダメージを与える仕組みが満載です。1つ1つの門の情報を知らずして、松山城攻略は難しい。

出典:flickr

「四方から攻撃できる門や、屈曲した進路には複雑な仕掛けが巧みに施され、​城壁には無数の狭間が切られています。それらの多くは城を攻める武者が最も恐れる「横矢掛」となり敵の侵攻を妨げているのです」

と鈴木さん​。例を挙げたら、枚挙にいとまがありませんが、このような仕掛けや造りが、難攻不落といわれる所以。各門をクリアするだけで精一杯かもしれませんが、逆手を取った攻撃を仕掛けられれば、勝算はあるかも。武将気分で戦策を練る、上級者の楽しみ方ができちゃいます!

出典:​松山観光ボランティアガイドの会

「ちなみに、城好きで知られた歌舞伎役者の故・坂東三津五郎さんは松山城をとても愛し、レギュラー出演していた「日本の城見聞録」の三津五郎さんが最後に出演した時にも松山城の景色が使われたのです」と、鈴木さんはとっておきのエピソードを教えてくれました。

がっつりガイドも無料!松山城マニアに何でも聞いちゃおう

松山城観光をぐっと楽しいものにしてくれる、松山城ボランティアガイドの皆さん。現在、ガイド登録しているのは176名(2017年10月)で、今回お話を聞いた鈴木さんはセカンドライフのやりがいとして、講座受講や研修を経て「松山観光ボランティアガイドの会」の一員になりました。ガイドを​依頼​するのは​中高齢​の夫婦な​どが多いものの​、最近の城ブームを受けて、若い世代の関心もアップしているそう。

コースは60分・90分・120分の​3コ​ースで、1番人気は90分です。松山城は高低差があり、本丸が広いうえ、その奥に見どころの本壇があるので他の城と比べ、見学時間がかかります。

「松山城が誇る、この完全な形で現存されている本壇をご覧いただくために、時間がかかると言ってもいいです。90分コースなら、本壇を含め本丸の高石垣や、数々の仕掛けをちゃんとご覧いただけますよ」

と鈴木さん。これだけ楽しめるのに無料なんて、良いのでしょうか!

出典:松山観光ボランティアガイド​の会

「松山城観光がぐっと楽しくなること請け合いです。ガイドは予約も可能です。松山城内で見かけた時などは、気軽に声をかけて下さいね。おひとりでも、グループでも、いつでも大歓迎ですよ」

と、頼もしい一言。皆さん本当に松山城を愛しているのが伝わりました。マニアックなガイド、ぜひみなさんも利用してみて下さいね。

 

松山観光ボランティアガイドの会
TEL:089-935-5711
対応時間:9:00~12:00 13:00~16:00
Email:matukan2abeam@ocn.ne.jp
料金:無料
※旅行会社からの申込みの場合のみガイド1名につき2,000円
※事前予約はガイド日の7日前まで
http://www.matsuyama-guide.jp