240年目を迎える伝統の砥部焼に新しい風を。女性作家チーム「とべりて」

砥部町の特産品である砥部焼の魅力をPRするために結成された、7人の女性作家チーム「とべりて」。キャリアも世代も異なるメンバーがそれぞれ、女性らしい感性を活かして、新しい砥部焼のスタイルを追求した作品がJRの観光列車「伊予灘ものがたり」や愛媛県内のホテル・飲食店で使用されるなど、注目を集めています。そこで、今回は彼女たちの作品の魅力に迫りました。

出典:とべりて
女性の感性が光る、色もかたちも自由な発想で、次世代の砥部焼にチャレンジ

チーム名の「とべりて」は砥部焼への愛情を込めて「とべやきのつくりて」という意味。手描きテイストが可愛らしいロゴもメンバー皆さんのお手製です。

出典:とべりて

チーム結成のきっかけは「砥部焼陶芸塾」。砥部焼の後継者育成を目的とした塾で、卒業生を交えて飲み会をする機会も多く、ある日、代表の山田ひろみさんの「低迷して元気が無い砥部焼を、応援する女性チームを作らない?」という提案に、他のメンバーが賛同し、「とべりて」が誕生しました。

伝統的な砥部焼スタイルは、藍色の呉須を用いた絵付けに、ぽったりと厚みを帯びた形状、丈夫で使い勝手がいい普段使い用の器です。「とべりて」のメンバーは、そんな従来の砥部焼に敬意を払いつつ、意外な配色を用いたり、ポップな絵付けをしたりと、今までの砥部焼のイメージを覆す魅力いっぱいの新しいデザインに挑戦しています。

出典:とべりて 山田ひろみさん作品

例えば、メンバーの山田さんの作品は、着色しない箇所をマスキングし、刷毛でたたいて色を付ける手法で、上記の様に仕上がる焼き物では希少な作風です。

出典:とべりて 佐賀しげみさん作品

もとグラフィックデザイナーの佐賀さんは前職の技術を生かし、オリジナルのモチーフを絵付けに使うなど、独自の優しい世界観を表現しています。従来の型にはまらない新しい砥部焼は、結成から時を置かず、大きな注目を集め、メンバーは陶芸イベントやメディアで引っ張りだこに。

当時、自分たちの想像を超える世間の反応に驚いたものの、周囲の評価にはあまり惑わされずに,自分たちの行動ひとつで砥部焼の評価も上下するという想いからとにかく目の前の事だけに懸命に取り組むことを意識されたそうです。

食卓にさりげなく華とセンスを添える「とべりて」の食器たち
出典:とべりて

メンバーのキャリアや世代は様々。年齢だけとっても18歳差があるため、たまに意見の食い違いも生じますが、それこそが多くの人の心を惹き付ける理由ではないでしょうか。

「とべりて」の器の購入者は圧倒的に女性が多く、展示会などを心待ちにしているファンも少なくありません。

現物を見て「こういう物が欲しかったのよ!」と興奮する人も。様々な人の感性から生まれる型にはまらない砥部焼はこれまでにない、器として多くの女性を惹き付けているのだと感じられます。

夢は海外で砥部焼をPRすること!明るい未来のために今できることを
出典:とべりて

愛媛県内では、「道後温泉花ゆづき」や砥部町の「ジュタロウ(Jutaro)」で「とべりて」の食器が使われています。

また、JRの観光列車「伊予灘ものがたり」車内で提供されるスイーツセットでは、スイーツプレートとコーヒーカップがそれぞれ使われています。愛媛県内ではよく目にする砥部焼ですが、県外イベントなどでは、まだまだ無名である事を痛感するそうです。

出典:とべりて

砥部焼の認知度を広げていこうと、「とべりて」では、食器だけに留まらず、これまでに累計2500個を販売した、ゆるキャラ「みきゃん」や「ダークみきゃん」のピンバッジを手掛けるなど、精力的に活動されています。

「今後もチームで試してみたいことはたくさん。直近の目標としては、砥部焼の映画製作実現に向けて、砥部焼をもっと積極的にPRし、砥部町全体を盛り上げていくこと。将来的には、いつか海外の展示販売会に参加して、砥部焼の魅力を世界に発信するのが大きな目標。そのために、メンバー一同、それぞれの得意技を活かして、日々着実に歩んでいきたいと思っています。」

「とべりて」のメンバーの皆さんは今日も砥部焼の魅力を発信し続けています。