東北だけの文化じゃなかった「芋煮会」。日本三大芋煮の大州いもたき!

出典:大州市観光協会

屋外に置いた大きな鍋で野菜や肉を煮込んで、グツグツ、コトコトーー。

「芋煮会」といえば、東北のイメージを持つ人も多いはず。日本最大級のクレーン車を使って作る山形県の芋煮会はとても有名ですよね。みんなで鍋を囲んでつつき合う、身も心も温まる素敵な風習です。

でも、実は「芋煮会」を行う風習は、東北だけではないのをご存知でしょうか。

愛媛では「いもたき(または「いもだき」)」という風習があります。東北同様に​大きな鍋で食材を仕込み、屋外(河原)で地域の人たちと囲むのが習わし。

各地域によって細かな違いはありますが、里芋をメインに、出汁の香るスープで鶏肉や地場野菜の具を煮込んでいて、見た感じは東北とやや似ています。出汁については鶏やいりこ、海産物などそれぞれの地域で特色があります。

伊達政宗の息子が芋煮文化を持ち込んだ⁈

どうして東北と遠く離れた愛媛に似たような芋煮文化があるのでしょうか。

「いもたき」の起源には諸説ありますが、一説によると、初代宇和島藩主になった伊達政宗の息子・秀宗が持ち込んだ(かもしれない)、なんて説もあるのです。正確な資料ではないので、「信じるか信じないかはあなた次第」ですが…! 

出典:大洲市

わかっている限りでは、「いもたき」の発祥地は大洲市と言われています。300 年以上前の江戸時代、この地域では春と秋に「お籠り」という集会が定期的に行われていて、住民が相談事などをしました。

秋のお籠りでは各農家が里芋を持ち寄り、肱川の鮎からとった出汁で炊いた鍋を食べるのが慣例。素朴ながら、親睦を深める大切な機会でした。

地形の事情から川が氾濫しやすく、稲の不作に悩まされることの多かったこの地域の農民にとって、湿潤な土地を好む里芋は貴重な栄養源であり、食を支える大切な存在。美味しくて、温まって、楽しい、「いもたき」は、とてもハッピーなイベントだったことでしょう。

そんな先祖代々の幸せが詰まった風習を観光行事化したものが、現在の「いもたき」となっています。現在は河原にゴザを敷いて、​月見を兼ねて屋外で鍋を囲むのが主流。東北では昼の開催がほとんどで、食材も持ち寄りが多いですが、愛媛では夜の時間にお月見と合わせて、食材も持ち寄りではなく宴会的に行われます。

また大洲では秋になると​、​給食や市役所の食堂などにも「いもたき」が献立に並びます。

サミットで「日本三大芋煮」が夢の競演

調べてみると、さらに興味深いことがわかりました。雑誌「旅の手帖」が、2013年に「日本三大芋煮」を発表し、前述した愛媛県大州市「いもたき」の他に、山形県中山町と、島根県津和野市の芋煮会を選出。

この縁から2014年より3年連続で3都市持ち回りで「サミット」が開かれていたのです。会場では3市町のいもたきが競演し、来場者は食べ比べを楽しんだようです。どんな違いがあるか、2市町の芋煮も合わせて見て見ましょう。

出典:津和野町

【愛媛県大洲市・写真上】
大洲のいもたきは里芋や油揚げ、干ししいたけ、こんにゃくなどを入れた、具だくさんの醤油ベースの甘めのスープが特徴です。元々は鮎で出汁を取っていましたが、近年は鶏ガラを使っています。主役の里芋にも特徴があって、大洲の里芋は粘りが強くとろけるような食感なのに煮崩れしにくいのです。

【山形県中山町・写真左】山形県中山町の元祖芋煮は元来船頭や商人が終点の中山町で荷揚げや荷待ちの際に食べたのが始まりのもの。「棒たら」をメインに、砂糖や醤油は控えめにし、薄味に仕上げた「芋棒煮」と呼ばれるスタイルです。現在は牛肉を使ったものが主流で、ネギをたっぷりと入れ、すきやきを思わせる濃厚な味わいです。ちなみに、山形県でも庄内地方では味噌をベースに豚肉が多く使われています。

【島根県津和野町・写真右】島根県津和野町の芋煮は鯛と里芋のシンプルな具材が特徴です。炙った小鯛と昆布からとった出汁に、里芋と鯛のほぐし身と柚子皮を薬味に添えた、すまし汁に近いシンプルで上品な芋煮。こちらは同町の笹山地区で採れる、火山灰で育つ里芋が絶品とされていて、ゆずの香りが出汁の旨味と里芋本来の味を引き立てます。「似て非なるもの」というのが伝わりましたでしょうか。

…って、実際に食べてみないとわからないですよね。このサミットは残念ながらこの3回で終幕となってしまったようですが、愛媛県内では9月から10月にかけて、13箇所でいもたきが行われています。

出典:大州市観光協会

各地域によりタコを入れたり、川ガニを入れたり、和太鼓演奏がされたり、お城を眺めながらだったり、それぞれの魅力があってどれもオススメ。1人前1500 円~2000円程度で予約できるので、各地の芋煮めぐりをして、自分好みの芋煮を探すのもきっと楽しいはず。ぜひぜひ、愛媛の秋の味をお楽しみください!

 

大州市観光協会
TEL:0893-24-2664
愛媛県大洲市大洲649-1
http://www.oozukankou.jp/