「農」と「食」のテーマパーク! 全国から視察が絶えない、大人気の凄すぎる農家直売所を今治に発見!


人口15万程度の地方都市、愛媛県今治市に全国からこぞって視察がやってくる話題の農家直売所「さいさいきて屋」があります。農家直売所だけでなく、カフェや食堂まで併設され、年間来客数は120万人、売上総額は25億円以上にもなる巨大な食のテーマパークとなっています。

何故、さいさいきて屋はこんなにも人を惹き付けるのか、その秘密を、同店を統括する西坂文秀さん(JAおちいまばり直販開発室長)に聞きました。

商品は約18,000点。地元生産者と連携した圧倒的な品揃え

「さいさいきて屋」に来て、驚くのが広い売り場にズラッと並んだ商品の数。直売所として国内トップの面積を誇る売り場には、野菜や果物、肉や魚などの生鮮食品をはじめ、乳製品、お茶やジャム、ドリンク類などの加工食品ほか、パンやスイーツ、惣菜に至るまで、日々の食事に必要な全てが揃っています。その数はなんと約18,000点!!


農畜産物だけでも年間400種類という驚きの品揃えで、定番食材だけでなく珍しい食材も充実しています。

例えば、他の地域にはなかなか出回らない糖度の高い「おんまくキャロット」や、新品種の愛媛里芋「媛かぐや」などの希少な食材も、ここなら見つかる可能性大。そのため飲食店関係者からの問い合わせも多く、朝方には料亭の板前やレストランのシェフの、買い出し姿もよく見られます。しかもそのほとんどが地元、今治産。

例えば野菜や果物は90%、牛豚肉は100%、惣菜も基本的に生産者が栽培する野菜を使っています。地元生産者と連携することでこの品揃えが実現しています。

組合員であれば、誰でも出荷OK!ひとりでも多くの生産者に売り場を提供

さいさいきて屋が誕生したのは2000年。「今治の農業の衰退と離農に終止符を打ち、生産者にもっと活躍の場をつくりたい」との想いから古い空き家をスタッフで修繕した小さなお店からスタートしました。

当時のスタッフはわずか5名で、会員数は92名でした。新鮮な生鮮品がお買い得な価格で購入できると、どんどん人気が広がっていき、小さなお店は瞬く間に大きく成長し、2007年に現在の店舗にリニューアルオープンしました。

現在の会員数は、創業時の10倍以上の1,200名で商品点数は18,000点。この圧倒的な成長の裏には、生産者のことを考え抜いた販売システムとスタッフの想いがありました。

「さいさいきて屋」に、これだけ多くの生産者が集うのは、会員(組合員)であれば誰でも野菜を売る事ができるというシステムのため。規格外でも少量出荷でも大丈夫。価格も50円から自分で決められるので、兼業農家はもちろん、高齢者や主婦でも気軽に商品を出荷できるのです。同時に店側でも商品の質を保つために、営農指導員が常に出荷指導などを行っています。

また、生産者に無理のない出荷を続けてもらうため、ある時期から、必要とされる箇所にお店のスタッフが自然と生産者のもとに集荷を行うようになりました。

例えば、毎日商品を店舗まで運ぶのが難しい高齢者のために、スタッフが毎朝出勤ついでに40km管内をトラックで巡回し集荷するのです。これは、出荷者にお願いされたのではなく「どうしたらたくさんの商品を集められるか」と知恵を絞った結果、自然とこのスタイルになったそうです。ほのぼのとしてしまいます。

高齢農家の方の生きがい。HAPPYな農業がここにはありました

現在約1,200名の生産者会員の中には、高齢の農家の方も少なくありません。地域全体の農業の元気がなかった頃は、農家の方はある程度の年齢に達したら、体力のいる農業は諦めざるを得ませんでした。

しかし、さいさいきて屋ができてからは、自分ができる範囲で作物を作り、出荷し、それがいいものであればファンも付くなど、今まで想像しなかった世界が、高齢農家の方々に広がったのです。

一旦仕事を離れたら、静かに余生を送る既存のスタイルから、長年かけて培ってきた技術を手放すことなく、逆に直接の評価さえもらえるシステムは、多くのベテラン生産者の方の生きがいにもなりました。

店側も、高齢者の方の意識の変化を感じています。また、実際に離農寸前だった人々を、農業の世界に引き戻し、生涯現役で働けるシステムを作ったことに、大きな誇りを感じています。生産者は好きなだけ働けて、お客様は新鮮なおいしい食材を買え、店舗は賑わい、さらにより良いサービスの提供へとつながっていく。絵に描いたようなWIN-WINがここにはありました。

不易流行、さいさいきて屋、次なる挑戦


さいさいきて屋は新しい取り組みのひとつとして、2016年3月に「彩咲朝倉(さいさいあさくら)」同年4月に「SAI&CO(サイコー)」をオープンさせました。

彩咲朝倉は金融店舗とスーパー、カフェが一体化した、地域の方々のライフスタイルに合わせた新しい形のお店です。SAI&CO(サイコー)は「さいさいきて屋」が「毎日の食」とすれば、新店舗はいつもと違う「非日常的な食」がベース。若い世代を中心に、すでに今治の人気スポットとして定着しつつあります。

一方で、ずっと走り続けてきた本家の「さいさいきて屋」は、これまでの取り組みを一旦見直す時期にあるそうです。いい仕組みはそのままに、本当の直売所とは何かを考えつつ、次のフェーズに入ります。

最終的な夢は、農家の数自体を増やす、本当の農業振興です。今治弁で「さいさいきてや」は「しょっちゅう来てね」の意。今や施設は、買い物や食事の場としてだけではなく、地域の交流の場としての機能も果たしています。今後ますます地域を活性化させ、食卓に美味しい食を運び続ける場であって欲しいと願うばかりです。

写真出典:さいさいきて屋

 

さいさいきて屋
TEL:0898-33-3131
営業時間:9:00〜19:00(無休※1/1〜3は除く)
愛媛県今治市中寺279-1
http://www.ja-ochiima.or.jp/index.php