四国の端っこから全国へ。愛媛県佐田岬の極上しらす


四国最西端の佐田岬半島に、休みの日ともなると大勢の観光客や地元客が押し寄せる人気スポット「しらすパーク」があります。

訪れる人たちのお目当てはひとつ!日本一とも称される、漁師が水揚げしたばかりの、最高に新鮮なしらすです。佐田岬は愛媛県西部から突き出た日本一長い半島で、その長さで北上するちりめんしらすの群れをせき止める、日本屈指のしらす漁場です。

最高品質のしらすが獲れる佐田岬。一方、漁師たちには大きな苦悩が・・・

背後に急峻な山地が迫り、平地がほとんどない佐田岬半島は、その地形のために道路の整備が遅れ、1960年代以前は「陸の孤島」と呼ばれる場所でもありました。

産業は発達せず、耕せる土地がないため農業にも向かない。でも、目の前には豊かな海があり、遠浅な海はプランクトンが豊富で、昔から大量のしらすがやって来る、格好の漁場でした。

しらすは浅瀬に集まる性質があるため、川之浜の前に広がる遠浅な海をめがけてやって来ます。加えて、体の色を周辺の色に近づけてカモフラージュする性質があるため、白浜続きのこの海では、自らを全身美白してくれるのです。


しかし、元々しらすは高値では取引されないことと、足が早く、鮮度が命の食材のため、不便な遠隔地である佐田岬のしらすは流通が限られ、漁師たちは長年、苦悩していました。

この状況を変えたのがしらすパークを運営する朝日共販株式会社でした。朝日共販株式会社は弱みを逆手にとったビジネスモデルで、佐田岬の漁師たちを救ったのです。

とにかく鮮度、鮮度、鮮度!弱みを逆手に取って最大限に利用

しらすは高値では取引されない。大量に獲れても、その分安く売られてしまう。これが漁師の人々の常識でした。佐田岬のしらすは最高品質。ただし、足が速く傷みやすい。

しらすの成魚となるカタクチイワシは「鰯(いわし)」の漢字が示す通り弱い魚です。幼魚のしらすはさらに弱く、水揚げの時点の重みで死んでしまうものも少なくありません。獲ったそばから弱り、鮮度が落ち続けていく、ある意味大変扱いづらい魚なのです。

でも傷まなければ?

そこで考えられたのが、獲ったしらすをただ売るだけでなく、6次産業の商品として販売することでした。ここから「最高の釜あげしらす」への熱き挑戦が始まりました。

徹底したのはとにかく鮮度!

水揚げから加工までの時間を1秒でも縮めて鮮度を少しでも良くすることに徹底的にこだわりました。幸いなことに、漁場と港近くの加工工場はわずか20分で行き来が可能。

水揚げされ、工場に運びこまれた新鮮な状態のしらすは、すぐに茹でられ、マイナス50度で一気に冷凍。その後はマイナス25度の冷凍庫で保管します。水揚げからここまでたったの約1時間。

この超短時間の処理により、冷凍してもふかふかで美味しい釜茹でしらす商品が実現しました。


さらに、一般的なしらす漁では1日3〜4往復ほどの水揚げを、あえて6〜8回に増やして、状態のいいしらすをキープ。また、水揚げ時に網の中が軽くなることで、しらすのダメージを減らすこともでき、品質も向上します。手間も燃料もかかりますが、全ては鮮度を保つため。迷いはありません。

1日6〜8回の漁をタフにこなす自慢の若手漁師

1日6〜8回のしらす漁を手際よく行うのが「福善船団」。朝日共販株式会社では全国でも珍しい、漁師を正社員で雇用することで、漁師の生活の安定化を実現しています。この船団を率いる福島さんは、

「漁師の世界では、荒天以外は365日休み無しというのが常識。でも、うちは愛媛で初の『日曜休む漁師』を実現しました。(笑)」

と言います。「福善船団」は網艘を6船、運送艘6船の12艘から成る船団で、漁師は20代から30代が中心です。漁業界では漁師の後継者問題が顕著になっていますが、朝日共販株式会社では、この熱き志と仕組みのおかげで、無縁になっています。

メンバーは漁師の跡取りが中心ですが、中には漁師未経験者もおり、個性豊かな面々が揃っています。

ここでしか食べられないしらすがある。過疎地・川之浜地区に人を集める


キラキラと透明で新鮮な生しらす。そして、そのしらすから出来る釜あげしらす。これらを最高の鮮度で食べて欲しい!そんな想いからできたのが、加工工場とセットになった先述の「しらすパーク」。

自慢のしらすを一番美味しい状態で食べてもらうには、これがベスト。地元に雇用を増やしたい、という気持ちもありました。とは言え、最初計画を話した時の周囲の反応は微妙。「こんな不便な場所に人なんか来ない」と。

それでも、しらすの品質には自信あり、やってみなければ分からないと、取り組みを始め、そして結果は大当たりだったのです。


一番の人気は食堂の「釜揚げ、生しらす2色御膳1,500円(税込)」。一口で分かる味わいに、来場者のほとんどがファンになると言ってもいいほど。数時間かかっても、ここのしらすを食べに来たい、と言ってくれる人も少なくありません。

夢のしらすは次のステージへ。佐田岬から日本全国に、そして世界へ

「鮮度を保つのが難しいしらす」「行くのに不便な場所」という弱みを逆手に取ることで、朝日共販株式会社は新しいビジネスモデルを確立しました。でも、まだまだ先を見据えています。

全国の意欲ある漁業者と組んで、魚を買い上げる仕組みを作り、日本漁業の活性化にも取り組みたいという想いもあり、さらに同社の視線の先は世界マーケットにも向けられています。

「栄養価が高いのにカロリーが低く繊細な味わいのしらすは、ヘルシー志向の高まる海外の市場において、遠くない未来に受け入れられるはず。そんな日を目指しながら、足元も大切に。日々高品質のしらすを食卓に届けられるよう努めています。」佐田岬から世界へ。新たな挑戦はまだ始まったばかりです。

写真出典:朝日共販株式会社 

 

朝日共販株式会社
TEL:0120-133-004(9:00〜17:00)
愛媛県西宇和郡伊方町川之浜652-1
http://shirasu.jp/
しらすパーク
TEL:0120-133-004(9:00〜17:00)
愛媛県西宇和郡伊方町川之浜652-1
営業時間:9:00〜17:00(火曜定休)
しらす食堂営業時間:10:00〜15:00(L.O14:30)(火曜定休)
駐車場:100台
http://www.shirasu.jp/park/