今治発!住職がプロデュースする「お堂×カフェ」。 地域活性に仏様の力を・・・

近年、人口減少や単身世帯の増加などに伴い、古くからのコミュニティが持つ機能の衰退が、課題として浮き彫りになっています。かつては地域の核としての役割を果たしていた寺社も求心力が弱まり、物理的にも心理的にも、地域から人々の軸となる拠り所が消えつつあります。

仏寺は檀家離れが顕著なうえに、近年は檀家を持たない「ご祈祷寺」も増加の傾向にあります。

神社も同様で、氏子の高齢化やご祈祷依頼の減少などから、経営に頭を悩ませていることも少なくありません。人口減が著しい地方の状況は、さらに深刻です。

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そんな暗雲が立ち込める一方で、今までにない新たな取り組みで、V字回復を図る寺社、地域の活性化に一石を投じ効果を上げる寺社が、全国に増え始めています。例えば、愛媛県の中でも、格式ある藩主菩提寺であるがゆえに、なかなか一般市民とのつながりが持てなかった大洲市の如法寺などは、和装の座禅会をきっかけに、地域に開かれたオープンなお寺へと変わりました。

出典:TheZEN如法寺もりあげ隊

そして、今治市でも現役の住職が仏様と甘味の力を借りて、商店街の活性化を図るというユニークな試みが話題を集めています。

住職がプロデュースする「お堂×カフェ」
出典:カフェ寺ス慈照堂

今治市の銀座商店街の真ん中にある、1階がガラス張りの観音堂、2階がカフェという、ちょっと不思議な空間。ここは、同市の乗禅寺住職越智瑞啓さんが手がける「カフェ寺ス〜慈照堂〜」です。

店長の財津さんは真光寺の副住職で、人口減と高齢化で、シャッター街となった商店街を元気にできればという想いと、発達障害などを抱えた人たちのために、雇用創出をしたいという2つの想いからお堂とカフェが一体化した新しい形のコミュニティスペースです。

直感が大当たり?3種のかき氷が大人気メニューに
出典:慈照堂 facebook

2階「カフェ寺ス」のフードは全て手作りで、中でも夏期限定のかき氷3種は、オープン当初から話題となり、多くのメディアに登場しました。メニューの目玉にかき氷を選んだのはプロデューサーでもある越智住職。

お店がある今治市は、かき氷の聖地とも言われており、行列ができる「登泉堂」や、メディアにも度々登場する「玉屋サントノーレ」など、殿堂入り級の店の他、数々の個性的な店舗が軒を連ねています。

慈照堂も地元の名物に乗じたのかと思いきや、なんと!!!かき氷を選んだのは単に「好物だったから」とのこと(笑)!ただ、好物なだけあって、クオリティには相当なこだわりが詰まっています。

出典:慈照堂 facebook

1番の人気のいちご味は、いちごを煮詰めた手作りシロップを贅沢に使用しており、いちご感がものすごいと1度食べてファンになる人が続出。

昨年は、問い合わせも多く、売り切れてしまう日も度々あったそうです。かき氷の激戦区、今治に新星誕生です。かき氷は5月〜9月末までの期間限定で、売り切れの日もあるので興味のある人はお早めに!

実はカフェよりも人気?参拝者が絶えない24時間オープンの観音堂

話題性のあるカフェとかき氷に注目が集まりがちですが、カフェよりも1階の観音堂「慈照堂」に来る人の数のほうがはるかに多いそうです。これはオープン以来ずっとそうで、越智住職と財津店長も、最初は驚きを隠せませんでした。

「商店街にカフェと観音堂を構えたのは、地域活性と雇用創出のため。ただ、一僧侶として、暮らしの中に、お寺よりも身近で、気軽に立ち寄れるお堂があったら、いくらか人の心を軽くできるのでは」

という、小さな祈りにも似た気持ちは、多くの人に届いているようです。財津店長が日々目にする参拝者の多くは、好きな時に来て手を合わせ、お線香をあげて帰るそう。改まって訪れるというより、ふらりと立ち寄っている感じ。でも、それがきっと、今の時代に合っているのでしょう。

「この場所ができたことで、生活の中で少しでもホッとしてもらえる時間を持ってもらえる。仏様が暮らしの中にいる。ああ、自分たちがやっている事は捨てたもんじゃないって、胸が熱くなります。」

と、お話いただきました。

とはいえ、かつての商店街の復活はまだまだ道のりが遠いそうで、今後も足元から照らして、1歩1歩進んでいきたいと、強い気持ちをもたれていました。

もっと人が集う空間に。目指すは人と人をつなぐ「縁結び」の場づくり

慈照堂ではイベントも開催しており、これまでもお坊さん仲間と一緒に、座禅会や写経会などを開催しています。

出典:慈照堂 facebook

今後も、「縁結び」をテーマに色々なイベントを企画しているそうです。

「同じ地元に住んでいるのに見知らぬ者同志だった人たちが、繋がる場ができたら嬉しいです。地元の方をゲストにトークショーをやったり、得意分野を持つ人にワークショップをお願いしても。もちろん、男女の出会いだって大切です。この場を活かして色々な縁を広げていきたいですね。」

お二人は、お寺の存在は檀家をはじめとする地域の恩で成り立っていると考えており、受けた恩を地域に返したい、そのためにお寺がお寺のことだけをやっていてはいけない、仏教としての芯を持ちながら、地域に対してもっとできる事があるのではないか、との想いが様々な活動に繋がっています。

観音堂の屋号「慈照堂」は、越智住職のお寺定禅寺のお堂の名でもあります。

「慈しんで照らす」まさにこの場所にぴったりの屋号です。観音様は人を救う力を持つ仏様。ふと思い出した時、ちょっと落ち込んだ時に、ふらりと立ち寄ってみて下さい。晴れの日も雨の日も、観音様は慈しみを注いでくれるはずです。

 

カフェ寺ス 〜慈照堂〜
TEL:0898-35-4571
愛媛県今治市常盤町
http://jishodo.com/